私たちは、東照宮の三猿と同じです。いわゆる、”見ざる、聞かざる、言わざる“なのです。東京電力から現場監督にこのように言われたんですよ。「敷地の中で見たり来たりしたことは、外部に明かしてはいけない」と。メディアにばれることをものすごく恐れているのです。

私たちは命令されたことをしているだけなのに、上の人たちは全部隠したいのです。外に知られるとまずいことがあるので、話されたらまずい。作業員からしたら、そのようにしか思えないんですよ。

外部に話したことがわかると、色々な手で圧力をかけ、現場に入れないようにするのです。要するにクビですよ。圧力の前に、「明日から来なくていい」とすぐに、クビというとこもあります。

原発の体験が文や漫画になったりしていますが、あれは元作業員なので現役ではないです。現役だと、チェックがあり、そのようなことは出来ないのです。

桜井正雄さん（仮名）は、爆発が起きた福島第一原発の敷地で仕事する作業員です「ものすごい汗かき」で、顔から出る汗を拭きながら、原発事故の体験を話しだしました。現役なので、「本名や、実年齢、生まれも隠して欲しい。クビになりたくない」と前もって言われました。

「わたしは技術者はないから、専門のことを聞かれても答えられない」

と話し、話を続けました。

テレビで空から撮った映像がよく見られますけど、作業員がどんだけいるのか、知っている人はほとんどいないですよね。私自信「そんなにいるの？」とびっくりしましたが、いつも６０００人仕事しているそうです。これくらいの人数がいると、楽しい現場になると思いますが、本当は反対です。

休み時間になると、喫煙所に数十人集まりますが、話はないです。仮に話しても生まれの土地くらい。関西弁を話す人が一番多いですが、生まれは全国です。このような暑い所で仕事しているので、通常だと不満が出てもおかしくないのですが、それがほとんど出ないのです。

どうして、不満が出ないのかというと、上に密告されることを怖がっているのです。私たち作業員は、気持ち悪いくらいの沈黙、密告の中で暮らしているのです。黙って仕事するだけです。ただ命令されるがままで。

作業員同士で会話しないのは、お互い不信感を持っているためです。最近だと、このようなことがありました。小名浜のソープに５人で女性を抱きに行った際に、ちょっとしたことから言い争いになりました。殴り合いにはなりませんでしたが、路上で口論する様子を誰かが録画していたのです。

次の日、仕事に出ると、上司が喧嘩のことを知っていることに驚きました。仲間の中に隠れて密告する人がいるのです。なので、信頼なんてしてない。相互不信ですね。

原爆の作業員は福島のソープに通う人も多数いるみたいです